2015年11月26日
キャンプに持って行く本 ③
東 直巳「探偵はBARにいる」シリーズ

北海道の俳優といえば今や有名になってしまった大泉洋、彼が主演した映画の原作シリーズがハヤカワ文庫から出ている。
作者の東直巳も北海道出身で在住。そうか、いまや札幌には、こんな作家や、大貫妙子もすんでいるのかあ。
ご当地の小説は、やはり読みやすいものである。
映画は見ていないが、原作はハードボイルドの作法通りに、キャラ立ちと街の情景がしっかりしている。
日本のように、海外ほど奔放な言動の人間が多くないとドラマは成立しづらいな、と思ってきたが、作者はちゃんと他のルールを受け付けない、理解しがたい種類の人間たちを見つけている。ヤンキー、チンピラの類いに独特の喋りをさせることで、人種の違いに近いような、階層の違いを浮き立たせている。アメリカのハードボイルドのような、雑多な異界へと進んでいく気分にさせる。
中心となる街、ススキノのコンパクトさが飲み歩く、また事件屋稼業としてはちょうどいい。かつて札幌には、街の中でも古い平屋などがあったが、どんどんなくなり都市化が進んでいる。しかしちょっとはずれ、裏の方に行くと、古いアパートや家屋が意外に残っている。そんな様子もうまく作中で使っていて、様々な表情を持つススキノ周辺を、縦横に駆け回る探偵のフィールドとしてうまく描いている。
汚れた街を歩く、そんな題名のハードボイルドがあったが、一見楽しげな街、ススキノ、札幌で、探偵は汚れた欲望の数々にけりを付けていく羽目になる。
ネタ元として、ああそういえばそんな話があったよな、という北海道の話題をあつかっているというのが、飽きさせずに作品に入って行きやすい。一例を挙げると、養護学校建設反対運動、道警麻薬愛人事件がある。あの事件が一人でできるわけないだろう、というわだかまりを、(フィクションとして)作品内で構図を描いていったのは見事だった。
そんな巨悪や組織を描くと難しくなるのだが、探偵の一人称で書き進められているので、現場の臨場感のままに読み進められる。少し酒が入ると、なおいい。
徒手空拳に近い探偵は、行動だけに頼らずかなりの頭脳戦も凌ぐ。スパイ小説の雰囲気も漂わせる。
子ども、虐待を扱うのは、最近のハードボイルドの傾向なのだろうか。同じくハヤカワで出ているアンドリュー・ヴァクスのシリーズものは、主人公自身が養護施設で虐待にあったトラウマを抱える、というものだった。この東直巳のシリーズでも多く扱われ、ヴァクスと同じく立ち直らせるという希望ある結末の作品もあるくらいだ。
この「駆けてきた少女」は、暗い闇を持つ少女が登場するスピンオフシリーズの幕開けとなるものだ。内容としては最もハードな話が続き、そんなことが果たして札幌であるのだろうか、とも考えてしまうくらいだ。しかし空き物件が路地にある様子などには空寒くなるリアリティーがあり、大きな記事にはならなかったが、そんな事件があったのかもしれない。
このシリーズは番号がふられていない。1作目から確かめて読んだ方がいいだろう。

北海道の俳優といえば今や有名になってしまった大泉洋、彼が主演した映画の原作シリーズがハヤカワ文庫から出ている。
作者の東直巳も北海道出身で在住。そうか、いまや札幌には、こんな作家や、大貫妙子もすんでいるのかあ。
ご当地の小説は、やはり読みやすいものである。
映画は見ていないが、原作はハードボイルドの作法通りに、キャラ立ちと街の情景がしっかりしている。
日本のように、海外ほど奔放な言動の人間が多くないとドラマは成立しづらいな、と思ってきたが、作者はちゃんと他のルールを受け付けない、理解しがたい種類の人間たちを見つけている。ヤンキー、チンピラの類いに独特の喋りをさせることで、人種の違いに近いような、階層の違いを浮き立たせている。アメリカのハードボイルドのような、雑多な異界へと進んでいく気分にさせる。
中心となる街、ススキノのコンパクトさが飲み歩く、また事件屋稼業としてはちょうどいい。かつて札幌には、街の中でも古い平屋などがあったが、どんどんなくなり都市化が進んでいる。しかしちょっとはずれ、裏の方に行くと、古いアパートや家屋が意外に残っている。そんな様子もうまく作中で使っていて、様々な表情を持つススキノ周辺を、縦横に駆け回る探偵のフィールドとしてうまく描いている。
汚れた街を歩く、そんな題名のハードボイルドがあったが、一見楽しげな街、ススキノ、札幌で、探偵は汚れた欲望の数々にけりを付けていく羽目になる。
ネタ元として、ああそういえばそんな話があったよな、という北海道の話題をあつかっているというのが、飽きさせずに作品に入って行きやすい。一例を挙げると、養護学校建設反対運動、道警麻薬愛人事件がある。あの事件が一人でできるわけないだろう、というわだかまりを、(フィクションとして)作品内で構図を描いていったのは見事だった。
そんな巨悪や組織を描くと難しくなるのだが、探偵の一人称で書き進められているので、現場の臨場感のままに読み進められる。少し酒が入ると、なおいい。
徒手空拳に近い探偵は、行動だけに頼らずかなりの頭脳戦も凌ぐ。スパイ小説の雰囲気も漂わせる。
子ども、虐待を扱うのは、最近のハードボイルドの傾向なのだろうか。同じくハヤカワで出ているアンドリュー・ヴァクスのシリーズものは、主人公自身が養護施設で虐待にあったトラウマを抱える、というものだった。この東直巳のシリーズでも多く扱われ、ヴァクスと同じく立ち直らせるという希望ある結末の作品もあるくらいだ。
この「駆けてきた少女」は、暗い闇を持つ少女が登場するスピンオフシリーズの幕開けとなるものだ。内容としては最もハードな話が続き、そんなことが果たして札幌であるのだろうか、とも考えてしまうくらいだ。しかし空き物件が路地にある様子などには空寒くなるリアリティーがあり、大きな記事にはならなかったが、そんな事件があったのかもしれない。
このシリーズは番号がふられていない。1作目から確かめて読んだ方がいいだろう。
Posted by 伊達直人 at 14:20│Comments(0)
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